あんこう鍋/あんこう節
……とある蛙

街の底の暗がりに
今日もジッと上目遣い
月の光の届かない
煉瓦倉庫の一角で
人を脅す生業(なりわい)の
舌なめずりで誇りもなく
動くことすら億劫で
知性の欠片は今何処
物欲食欲性欲と
集めたガラクタ倉庫に積み上げ
通る獲物を物色し
どうせ孤独な独り者
父も母も兄弟もなく
天涯孤独の境遇で
生まれ故郷も忘れ果て
それでも死ぬのは真っ平御免
それで地震におののいて
逃げる算段生きる算段
街の灯りが見えながら
底だけ暗い倉庫街

いつか手錠の身の上で
光溢れる裁きの場
引き摺り出されて強ばって
世間の立派な良識と
法の光の裁きの魔
舌なめずりのマスコミに
バラされグツグツ鍋の中
そのまま肝も舐められて
何時しか骨もしゃぶられて、
無意味な肴になりはてて
そのまま骨になる我が身


自由詩 あんこう鍋/あんこう節 Copyright ……とある蛙 2012-04-19 08:31:49
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