ぴかぴかの机 
服部 剛

うつを抱えながら、日々がんばっている彼が 
汗だくで机をぴかぴかにした後 
休憩室で青い顔してのびていた 

あんまり一生懸命だったので 
(無理すんな)とは言えずにいたが 
ぐったりしている彼を見て 
「明日の余力をとっとかないと」と思わず 
少々、きびしく言った 

それははじめて僕が心から 
彼を思えた言葉であった 

春の嵐の夜だったので 
着替えて休憩室を出る前に 
「じゃあ、運転気をつけて」と言い残し 
僕は職場を、後にした 

今頃、ハンドルを握り 
生まれて間もない赤ちゃんのいる家へ走りながら 
ワイパーの動くガラス越しに彼は 
僕のひとことを、思い出すだろうか? 








自由詩 ぴかぴかの机  Copyright 服部 剛 2012-04-17 23:57:30
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