桜木 / その大きな木は生かされている
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その一本の桜の木は
古い民家の門扉の横にあって
左右に大きな枝を広げていた

ごつごつとして人を寄せ付けず
大地の力を漲らせ
雨風にその花弁を散らしながらも
あくまでも力強い

それでも
太い幹の根元には
幾度か自然との戦いに敗れ
肌を枯らした
大きなひび割れがあった

私は桜の木の下に立っている

大根より立ち上がる気が
強く私の心を打った
肌を枯らし
大きなひび割れを負った桜の木は
大きな力で生かされていた

手を広げ
枝を広げ
緑の指を広げて
みんなを見守っていた

その大きな力を感じられないか

人は今を生きているが
この大きな桜の木は
その時間を遥かに超える
長い時間の尺度で生きている / 生かされている

桜の木よ 桜の木よ
その子供のような瞳で見てきたことを
私に語っておくれ
私はその想いを繋いで行くから
私は言葉で繋いで行くから

脈打つ気が
私の体の中を流れて行く
大地の熱が 想いが
繋がって行く

手を伸ばし直立した私の身体を通って

足から頭頂へ
つま先から指先へ
拡がって行く
繋がっていく
大いなる気が繋がっていく

私の身体から桜の木へ繋がっていく

手を拡げ
枝を拡げ
緑の指を拡げ

この大きな桜の木から大空へ繋がっていく



 


自由詩 桜木 / その大きな木は生かされている Copyright beebee 2012-04-07 23:56:09
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