桜木 / その大きな木は生かされている
beebee
その一本の桜の木は
古い民家の門扉の横にあって
左右に大きな枝を広げていた
ごつごつとして人を寄せ付けず
大地の力を漲らせ
雨風にその花弁を散らしながらも
あくまでも力強い
それでも
太い幹の根元には
幾度か自然との戦いに敗れ
肌を枯らした
大きなひび割れがあった
私は桜の木の下に立っている
大根より立ち上がる気が
強く私の心を打った
肌を枯らし
大きなひび割れを負った桜の木は
大きな力で生かされていた
手を広げ
枝を広げ
緑の指を広げて
みんなを見守っていた
その大きな力を感じられないか
人は今を生きているが
この大きな桜の木は
その時間を遥かに超える
長い時間の尺度で生きている / 生かされている
桜の木よ 桜の木よ
その子供のような瞳で見てきたことを
私に語っておくれ
私はその想いを繋いで行くから
私は言葉で繋いで行くから
脈打つ気が
私の体の中を流れて行く
大地の熱が 想いが
繋がって行く
手を伸ばし直立した私の身体を通って
足から頭頂へ
つま先から指先へ
拡がって行く
繋がっていく
大いなる気が繋がっていく
私の身体から桜の木へ繋がっていく
手を拡げ
枝を拡げ
緑の指を拡げ
この大きな桜の木から大空へ繋がっていく