冷凍保存
そらの珊瑚

私たちが
毎日利用していたO駅は
すっかり様変わりし
駅ビルが隣接
広々と立派になっていた
女子高時代の友らと
改札口で待ち合わせる

あの頃
ここには
伝言板があって
「00ちゃん、先に行ってるよ!」
とか
白いチョークで
書いておいたものだった
今はケータイが教えてくれるので
もう過去の遺物だね

二十年ぶりという子もいて
会った瞬間はそれなりに老けたなあと
思うのだが
(おたがいさま!)
五分も話さないうちに
時間が解凍されていく

おしゃべりはつきない
みんなでビーチボールを
空に投げ合うように
はずむ
わらう
かしましい
ビーチボールは
突き指しないから安心
強くたたいても
たかがしれてる

会話の中身は
近況報告や想い出話
アンチエイジング
などなど
みな、幸せそうに見えた
私も、幸せそうに見えたかな
あの頃
メインだった
恋の話はひとつもなかった
独身の子もいるっていうのに
恋は知ってしまうと
色あせるものだから
話題にすることもないのだろう

手をふる笑顔を覚えておこう
私の笑顔も覚えておいてね
元気でね!

一人になった
帰り道で
さっきまでの私が
冷凍保存されていく
(いつかまた解凍して取り出せるように)
電車の窓ガラスに
映った私の顔
見知っているけれど
なんだかよそよそしく見えた
トンネルを抜けると
投げ合ったビーチボールが
空に浮かんでいた
白い満月となって
またねっ!






自由詩 冷凍保存 Copyright そらの珊瑚 2012-04-06 09:41:12
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