『ふたり』
あおい満月

深海のように
ふかまるおもいが
しろい糸のように
風にとけあっていく

ゆるせなかった過去や苦しみも
今はただ、
ふたりでいるだけで
ちいさなうたになり
穏やかになる

またいつか誰かが
忘れたいたみを
日めくりのように
めくったとしても
ゆうぐれの食卓にふたり
ここに、ふたり、と
わずかな花があるだけで
こんなにも世界は
ゆるやかなのだろう

わたしたちにはわたしたちの
ふたつでひとつの
過去と未来がある
癒しきれない陰や傷もある

未知のように
それは他の誰にもわからない
めをつむろう
そして、
めをあけようと
あなたがいう

わたしは海に花束をなげるように
いたみをなでる
生きていくこと、
生きていることが
ふたりのものがたりなのだと


                    二〇一二年三月二六日(月)


自由詩 『ふたり』 Copyright あおい満月 2012-04-01 16:46:24
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