おはたし
砂木

仲直りの握手をしようと右手をだすと
喧嘩してないけどと 夫も手をのばす
二時間飲み放題に行って
飲めるだけ飲んで来て吐いて
なんにもならないじゃないかと大喧嘩
のはずだったが 記憶がないらしい
私はずうっと怒っていたのに聞いてない
途方に暮れるが諦める
私は喧嘩してたんだよ 心の中で

休み時間の噂話 嫁姑のもめごと
食器ひとつの事なのに
私のものに触らないで
私のやり方に従ってって
我をはりはじめたらきりがない事
意地の張り合いから 抜け道があるとしたら

新婚の頃は 小さな詩集を作っていた
パソコンも携帯電話もなくて手紙の交流
嫁に男性から手紙がくるのは怪しまれた
原稿を送ったり 集金したり いろいろだけど
ほら いつものひとから と言われて
姑から手紙を渡されると 私が悪いような気がした
でもそんな時は夫が間に入って
本当にただ好きで趣味でやってるだけだからと
まったく取り合わないで かばってくれた
別に詩人になるわけでもなんでもないけど
ただ詩を書いて交流できる事が嬉しくて
そうだ 抜け道があるとしたら それは夫

飲み放題でも二時間くらいならほどほどだろう
車で送ってくれるというから 
何時に帰ってくるのなどと 電話をしなくても
玄関の鍵さえ開けておけば無事に帰るだろう
と 思った私が甘かった
好きで飲むのに 飲み放題とすると
二時間で充分 潰れられるのだな

喧嘩した覚えがない夫と仲直りしつつ
ではどうしたら ちゃんと帰るのか
次の手を考える
かばってくれてる 借りは返す
でも少々 手荒になるかもしれない
 


自由詩 おはたし Copyright 砂木 2012-04-01 09:13:02
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