揺すれて枯れて行く夢達へ
beebee






夢が骨折する街で


そこは夢が白く枯れて行く場所

夢は乾燥して白くなっていく
夢はポキポキ鳴りながら乾燥して行く
夢は乾燥するとやっぱり白い粉を吹いて
夢は立ち枯れた木のように葉もなく枝もなく
枯れた夢は地面に刺さっている

人は眠りに入ると手に持った夢をそれと擦り合わせ通り過ぎる

夢は粉を吹いて細っていく
刺さっている根はどこに届いているのか
枯れた夢の先は尖って細く螺旋状になり
根毛のように空気中に触手をのばして揺れていた
それは風のない夜の闇に白く伸びて空中に消えていた

そこは人の視る夢の入口の近くにあり
眠りに入ろうとする時の意識の震える場所だ

解剖台で腹を開かれた蛙が
電極を繋がれて反応を確かめられながら視る夢に入口で繋がっている
だから犬小屋で犬が視る夢の入口に近く
屋根の上で猫が視る夢の入口に近く
広大な草原で馬が視る夢の入口に近く
裏の池で鯉が視る夢の入口に近く
枝にぶら下がって蝙蝠が視る夢の入口に近く
墳墓の北壁で皇帝を護る麒麟が視る夢の入口に近く

鉱石が視るガーネットの夢、琥珀の夢、零れ落ちるダイヤモンドの夢の入口にも繋がっているに違いなかった

そこは眠りながら目を開けると見えると言う
だから人が目覚めようとする時に目蓋を揺すると
夢がそこに落ちるのだそうだ
落ちた夢は枯れていく
見ている人間から切り離されると夢は養分を無くして
乾燥して行くのだ
夢はポキポキ音を鳴らしながら乾燥して行く
ううっと君が目覚めの時に首をふると
君の夢が触手を揺すり
枯れた夢を揺すり
夢は切り離されて折れる

骨折する夢達の触手が空間に揺れている
それは揺すれている
それは繋がりを求めて揺すれている
それは眠りに入る者を待って揺すれている
それは静かに揺すれている
それは君をめがけて揺すれている

そこは人の視る夢の入口の近くにあり
眠りに入ろうとする時の意識の震える場所
ああ
私はそれを暴力のような思念をもって殴りつけ
圧倒的な力で揺すりたい



 


自由詩 揺すれて枯れて行く夢達へ Copyright beebee 2012-03-30 03:54:30
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