お風呂の電球
灰泥軽茶

お風呂の電球が切れたので
薄暗い中お風呂に入る
いつもより念入りに
身体を洗い
身体を流す

匂いが鮮明だ
シャボンの匂いをくんくんする
お湯に浸かりまるまると

どこか遠くの知らない家の押入れに入ったような
知っているようで
全然知らない人たちに囲まれながら
生活している
そんなことでもないのに
柔らかい不安が
ニュウと
口から出てきて
薄暗い湯船の上をプカプカ浮いているから

栓を抜いて
チュウチュウルリと
排水溝へ流してしまおう

徐々に空気に触れていく身体は重く
色んなものが詰まっていることを思い知らされながら
お湯がなくなる前に
よいこらせっと
たちあがり
冷たい空気と明るい電気の下
身体ぶるぶる拭いていく



自由詩 お風呂の電球 Copyright 灰泥軽茶 2012-03-27 01:25:03
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