Fish & Chips(時代少年)
恋月 ぴの
こと切れる最期の瞬間まで
彼はひとりの少年だった
とっつきにくさは彼の持ち味だったし
時代を憂いても
希望を捨て去ることはなかった
※
そんな彼との接点
あったのかな
と思うぐらいに希薄なのは確かなことで
例えばテロリストの肖像画を自室の壁に飾ったのは
あくまでもインテリアのひとつだったし
それをネタに友人たちを自室に招いたりはしなかった
そんなんだから
彼が何者なのか
彼が何を語っているのかなんて自分には興味なかった
※
あれは熱病だったのか
それともある種の方便だったのか
右手に鉾
そして左手には盾
語れる者だけが偉いとみせかけ
オリベッティの赤いタイプライターで打ち出したのは
永遠と見紛うryryryの羅列と
打ち損ねたままで放置された彼の名前
※
「そんなバナナ」
彼の悲報を知って女はそう叫んだとか
叫ばなかったとか
そして玉座に座ろうとするもの後を絶たず
ポピュリズムに必要不可欠なのは
判りやすい正義と
叩きやすい敵の存在で
ああ、掲げた旗のした
バナナ色したスカーフを首に巻く