トイレの花子
たもつ
夕暮れ時のトイレで俺は
花子を殴る
ドリフの大爆笑のオープニングテーマを高らかに歌い
俺は花子を殴り続ける
だって、お化けだぜえ、恐怖だぜえ、恐いんだぜえ
俺は花子を殴る
花子は微笑み俺を殴り返さない
俺の手は痛くない
俺はその手で何度も後出しジャンケンをしてきたが
俺の手は痛まない
俺 殴る 花子 激しく 殴る 花子 微笑む 花子
激しく 微笑み 激しく 殴り 返さない 花子
花子が水について独白し始めると
花子の手紙は静かに文字化けしていく
ドリフの大爆笑は既に末端の細胞まで浸透してしまった
それでも俺は高らかに歌いつづけ
爪の隙間から溢れ出そうとする仲本工事
を俺は殴る
違う 花子
俺が殴るのは花子
季節がすべておまえの名と一字違いだったらいい
ファミレスのメニューはすべて俺の名と一字違いだった
順に料理を注文し 食べ 飲み 短くなった
足の分まで
俺は花子を殴る
何故 殴らない 俺を 花子 生きる ことは とても
楽しい 花子 楽しい 何故 花子 こんなにも 花子
ドアの隙間から出て行こうとする半分のブー
それでも俺は花子を殴り続ける
痛まぬ拳で 花子
微笑むのはいつもおまえだけだ