DNAの息子
梅昆布茶
僕たちはDNAの命じるままに歴史を漂流し拡散してきた
朝露に濡れた森の匂いに
木漏れ日の暖かさに
まっすぐ空に突き刺さるメタセコイアの高みに
想いを託してきた
僕たちは恋愛という幻想のなかで種の保存のメカニズムに
操られる哀しい詩人なのだろう
木の実を集め獣を追い集落をつくり女を孕ませ子供を守り
法律をつくり建築術を編み出し生活の調度を整えてきた
2進法の電脳文化を作り上げてさらには
またヴァーチャルの森をさ迷おうとしている
SNSで友人を増やし自分をもっとこまぎれにしてゆく
アフリカの母をルーツとするホモサピエンスは
脳の新皮質つまり社会的スキルにたけたメスと
闘争本能に満ちたオスの大脳辺縁系の融合した集団的進化心理学の産物なのだ
その未来はコンピューターのようにブロセッサーとメモリー容量で
規定されてしまうのかも知れないが
僕は歴史的誤解でも良いから
脳の本能的な部分が命ずるままに詩を綴る
僕はホモルーデンスでもなくホモモビリタスでもなく
君に伝える為の何かをきっとDNAに刻まれて生まれてきたのだろうね
死ぬまでに遺伝子の暗号をダヴィンチコードのように解析できたなら
新しい言葉の地平線を開くことができるのかも知れないね
そう言葉は意味を超えて何かを予兆してゆくのだろうね