DNAの息子
梅昆布茶



僕たちはDNAの命じるままに歴史を漂流し拡散してきた

朝露に濡れた森の匂いに

木漏れ日の暖かさに

まっすぐ空に突き刺さるメタセコイアの高みに
想いを託してきた


僕たちは恋愛という幻想のなかで種の保存のメカニズムに

操られる哀しい詩人なのだろう


木の実を集め獣を追い集落をつくり女を孕ませ子供を守り

法律をつくり建築術を編み出し生活の調度を整えてきた


2進法の電脳文化を作り上げてさらには

またヴァーチャルの森をさ迷おうとしている

SNSで友人を増やし自分をもっとこまぎれにしてゆく


アフリカの母をルーツとするホモサピエンスは

脳の新皮質つまり社会的スキルにたけたメスと

闘争本能に満ちたオスの大脳辺縁系の融合した集団的進化心理学の産物なのだ

その未来はコンピューターのようにブロセッサーとメモリー容量で

規定されてしまうのかも知れないが


僕は歴史的誤解でも良いから

脳の本能的な部分が命ずるままに詩を綴る


僕はホモルーデンスでもなくホモモビリタスでもなく

君に伝える為の何かをきっとDNAに刻まれて生まれてきたのだろうね


死ぬまでに遺伝子の暗号をダヴィンチコードのように解析できたなら

新しい言葉の地平線を開くことができるのかも知れないね


そう言葉は意味を超えて何かを予兆してゆくのだろうね





自由詩 DNAの息子 Copyright 梅昆布茶 2012-03-18 22:16:54
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