ズー



いろがかわる。
いろがかわる、
何のいろが?
はだのいろが。
おとといからだわ
と、きいろい女が
椅子をたおし、
Tボーンステーキが
ばちゃばちゃの、あぶらのなかで溺れながら
運ばれてきてから、
わたしたちのまえは
ずっと。
ずっと、まえからじゃ
ないか?と、
歯茎まできいろい
女のとなりで、
白人のかれは
大陸という、
まるこげの肉を
きりわけて、
くろいのの目先は
ずっと、そんな調子で、
ねえ、ウェイターさん、
テーブルクロスが
のびていく、
あの地平線に、
隠れているのは、
だれなの?
あらゆる前菜が
零される
食卓の、はしっこでは、
なにも、みえない。
みえるわけがない。
きいろい彼女の
手のひらが
黒人の頬をぶつとき
しろいウェイターは
皿という皿を
たたきつけていた
地平線?
みえるわけがなかった。

さいごの、えいえんが
くちをきく
それは、こういうときに
頬にきいろがにじむ
しろいのと白人は
ぱちぱちと手を
あわせて
食卓から離れた
ウェイターをひとり
また、ひとりと、
つかまえた
わたしの牢獄には
湿度というものがない
赤茶けたこどもの
手をにぎり
きいろいまま
つぶやいたまま
女はしろくかわる
さいごの、えいえんから
ひらかれたままの
そのくちで
咀嚼される
こどもに囁く
いい?
いままでのすべてが
かわるのよ。


自由詩 Copyright ズー 2012-03-13 12:59:32
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