黒いマントのカラスたち
灰泥軽茶

一匹のからすが

あおあお鳴いている

小さな子供が歩きながら

あおあお
あおあお

声に出して真似している

雑木林の中から
鈍く光った黒いマントが見え隠れする

前を少し歩く老夫婦が

あおあお
あおあお

可笑しそうに
誰かを思い出しているのか
ちょっぴり寂しそうに
声に出して真似している

他のからすたちが

かあかあ鳴いて集まってきた

こんなにカラスがいるなんて

うすうす気づいていたけれど

黒いマントが重なって

せわしげに大きな夕闇テントを

広げはじめた

街の灯りがつく少し前の

ほんの一瞬

海底色夕闇テントをかきわけ

黒い蝙蝠傘を広げ

音もなく山奥空から

燕尾服を着た天狗が

街へ降りていく



自由詩 黒いマントのカラスたち Copyright 灰泥軽茶 2012-03-12 01:50:47
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