死因:セブンティーン

いちばん金切り声を上げたやつがいちばん愛される遊びを
円になって行っているモル的な灰は
だれにも知られたことのない魔法を使って
火葬場から教室へばらまかれている

水曜日はいつも屠殺場から死んだ鳥のにおいがする
帰り道の河はなぜかやけに白い
おんなの腿のなまめかしいのがちらつく
かれは頬のにきびを削り取って擲った
すぐに河を通り過ぎて

エロ本の荼毘を執り行う中学生の群れが
行き過ぎる女子高生たちを見上げている
橋は遠くに続いている、ただ遠くに
野辺送りの時に、おとこたちはずうっと紫煙を吐き出している

卵塔場の桜が古本屋の文庫本のように黒ずんでいる
タバコ屋のむすめがカートンの箱で自慰をしている
城跡の縁にいくつも並べられた空き缶が転げ落ちる
自転車の車輪が回るたびにこどもは割礼されている

灰、灰、灰、灰、灰、灰、

錠剤をライターで燃やして
昨日になったつもりでベッドに倒れこんで
かれは目をつぶる
きれいな
きれいな
黒っぽいおんなのひとが
鏡の向こうだけに立っている

ケロイドの、ての、ひら
だれの手もつなげないたばこくさい、ての、ひらで
おんなは顔を覆っている
だれにも見せるわけではないのに
おんなは顔を覆っている
焼け野原の
粗末な卒塔婆の

抉り取った丸い皮膚は吸い終わったフィルターの色をしていた

むすめの血がシーツに付くと
サイレンと救急車のランプの赤が
外から入り込んでむすめを隠した
土壁の端が
まだ黄色いままで
充血した目玉が
じっとむすめの腿を見ている

窓の外の色が戦争の色をしていてもおとこたちは薄ぼんやりとした白だった

ノートの色が黄ばんでも
なにも言われなかった
教室でライターを取り出した
おんなたちは車座になり、やがて横たわる

無数に
無数に
こいびとの寄り添う岸辺に吸殻
無数に
無数に

痰壷の奥でひしめいているおんなはすべて灰を被って
白いむすめは車からガソリンを抜いている


自由詩 死因:セブンティーン Copyright  2012-03-03 20:28:08
notebook Home 戻る