天駆ける
Seia
時間はスロウモーションのようにゆるく
春の陽射しは暖かく降り注いでいた
用事もなくただ布団を転がりながら
一人で過ごしている寂しさを紛らわせて
何かに気付いたように起き上がり
いじっていた携帯電話を投げ捨て刹那
玄関へ向けて駆け出していた
襖も引かず破りながら前へ進み
ガラス戸を割り血だらけの体で
玄関のドアを壊し外に飛び出した
コンクリートの塀を蹴り倒して
ここが二階だという事も忘れ
何も無い空中を跳ねていく
真っ直ぐ雲の向こうを見据え
そのうち眼下に海原を迎えて
足はいつしか溶けだして
自我は更に加速していく
時間が意識の後ろから
足をもつれさせ
ついて来る
やがて体は
桜花の
様に
散り
消
え
た