4人
HAL

その4人は故郷である奴隷貿易で栄えた街で生まれ
ドイツの或る街で夜通しライブに明け暮れていたクラブで
故郷のレコード店の店主に発掘された

4人は独りの仲間を解雇し新しいメンバーを迎え
再び4人となって1962年に稚拙な詩の楽曲を発表し
音楽界にデビューした

解雇された男の名前はすぐに忘れられ
4人とは無関係の場所で死んだ

そして4人は唯のバンドであったはずのものが
いつのまにか関わったものすべてに莫大な金銭を
もたらす帝国に変貌したことを知った

4人のリーダーであった男は
ぼくらを観たければコンサートへ
音楽を聴きたかったらレコードを
買えばいいと熱狂的なファンを揶揄した

そして4人は1966年にコンサートを辞め
スタジオに篭り録音に終始した

その翌年に5人目のメンバーと呼ばれた
元レコード店の同性愛者だった男は謎の死を遂げ
4人にも挨拶は残さず去って逝った

その4人が残した楽曲は213曲に及ぶが
多くは4人のなかの2人によって創られた
しかし2人が一緒に創った曲は20数曲だけだった

すぐに1970年8月30日がやってきて
4人は別れ1人となりそれぞれ好きに暮らした

その後1人は射殺され死に
もう1人は肺癌と脳腫瘍で死んだ
後の2人はいまも気侭に生きている

それがすべて
多くのひとびとが歴史に残るバンドとして
高い評価と尊敬や敬意すら抱いているけど

文字にすればこんなもの
4人だけじゃなく名のあるひとも名もなきひとも
生から死まで文字にすればこんなもの




※作者より
4人が誰かは記す必要はないと想います。
多くの方々は正解を答えられるはずだから
いつかファンとしてではなく
長い距離の視点から彼らを編んでみたかったものです。
ぼくがいまでも愛しているのは射殺された
できるはずはないのに普通であろうとした男です。
また帝国であった時代も解散後も最も幸福だったのは
新しいメンバーになった1人だったと想っています。


自由詩 4人 Copyright HAL 2012-02-27 15:07:47
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