濡れ衣
日野

差し出された濡れ衣を
貴方は静かに纏った
濡れ衣は貴方に張り付き
体軸を浮かび上がらせ
その様子を見て
貴方は静かに笑った

菊日和の空の下
貴方は濡れ衣を濡れ衣とせず
その場を後にした
その背中は自由であった
この先沛然の雨に打たれようとも
貴方は駆け抜けるだろう
古ぼけた帽子に手をやり
ああ大変な雨だと笑いながら
楽しそうに表を駆け抜けるだろう
貴方は自由だ

夏雲重なる日照りの日
わたしは羊腸の小道で
必ず貴方に出会うだろう
石畳に黒い影を落とし
干からびた小本を手にし
貴方は
ああ君ですかと
笑うのだ


自由詩 濡れ衣 Copyright 日野 2012-02-26 15:06:38
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