時を告げる鐘に思いを託し
ヒヤシンス

時を告げる鐘に思いを託し、
湖上を眺める人よ。
あなたは独りではない。

見上げればどこまでも広がる空がある。
足元には名も知れぬ草があちらこちらに生えている。
今あなたは一人だが、決して独りではないのだ。
過去にあなたが残してきた足跡は、今あなたが立ち尽くしているまさにその場で止まっている。

故に、これから先あなたは自由なのだ。

あなたは強い。まだ気がついていないのかもしれない。
なぜならあなたは生きている。
荒れ狂う大海の中でも、
大蛇に睨まれ立ちすくんでいても、
暗黒の世界に投げ出されたことがあったとしても、
兎にも角にも、あなたは今、生きている。
生きている事が大事なのだ。
とても強くて立派な事なのだ。

全てを投げ出してあきらめてはいけない。
人生に負けてはいけない。
戦うのだ。
戦い疲れてボロボロになったら休めばいい。
心ゆくまで休めばいい。それは負けではない。

あなたは気高い。
あなたは自分に負けてはならない。
あなたは強い。人間は強い。

そろそろ鐘の音が辺りに鳴り響く。
歩き出そう。ゆっくりと。
つまづいても恥じることはない。

濁った水は、この大地が吸い取ってくれる。
無駄の一切無い自然をその胸に深く焼き付けたら共に歩き出そう。

疲れたらまた来よう。
この美しい緑に囲まれた湖に。

鐘が鳴る。
美しい自然と共鳴している。
心の落ち着く音色で。

鐘が辺りに鳴り渡る。


自由詩 時を告げる鐘に思いを託し Copyright ヒヤシンス 2012-02-24 13:57:17
notebook Home 戻る