シャドウ ウィックフェロー


命の消えた君の顔は
見知らぬ人のようで
半分開いている目は
閉ざそうとしても固まって
開いてるのに何も見ていない

君に何かが見えていたとき
最後に見ようとしたもの
それを見ることはできたのかな

表情の消えた
ぽかんとした顔の中に
その答えを探ろうと
ほっぺの辺りに指を這わせる
あほやな あほやな
そう呟きながら

あれ
こんな所に黒子があったんだ
まじまじと見つめることも無かった
君の顔

そういえば警察の書類に
記された身長に
初めてそんなおチビさんだったと
気づかされた

身につけていた服と鞄を
最初に確認したときにも
それが君のものかどうか
俄に答えられなくて

無関心というのじゃないけれど
意外に見ていなかったんだな
君のいろんなことを

ドライアイスの入ったカバーから
顔だけ出した君の頬は
とても冷たくて
指先をはねつけるように強張っている

大丈夫だよ
君はもう寒くなんかないよね
痛くもないし
怖くもないし
悲しくもないよね

合わなくなった殻を脱ぎ捨てるように
そんな煩わしい
いろんなことどもから解放されて
きっとせいせいしてるよね

そうだろう?
だから父さんは
泣いたりしないよ
君はちっともそんなこと
望みはしないだろうから



自由詩Copyright シャドウ ウィックフェロー 2012-02-23 17:24:39
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