雨とプッチと毛糸玉
そらの珊瑚

自分も毛糸玉のくせして
プッチは毛糸玉と
戯れるのが好きだった

ふたつの毛糸玉は
所狭しと転がり回り
私は面白がってその糸を引いたものだった

小学生だった私と弟
そしてやっと歩き始めたもうひとりの弟と
プッチをめぐって
よく取り合いをしたものだった

最終的には
みなプッチに手のひらを引っかかれ
血みどろの果てに遊びは終わった

それからまもなく
プッチは忽然と姿を消した

明け方 雨の音で目覚めると
プッチのことを思い出す
かわいい白黒模様の毛糸玉を濡らして
寒がってはいないかと

プッチは
自由が好きだったんだね
人は
どんなに自由に憧れても
不自由な生き方しかできないんだ

明け方 雨の音で目覚めると
プッチが帰ってきたんじゃないかと思って
玄関のドアを開けてみる

糸のように見えたのは
暗闇に光る雨の糸だった

糸を手繰れば
今でも それはプッチとつながっている


自由詩 雨とプッチと毛糸玉 Copyright そらの珊瑚 2012-02-23 08:14:59
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