チューニング2
……とある蛙

超音速で舞い降りたガルーダの
尻尾の先にくっついたまま
世間を見てきた烏天狗の出来損ない
それが自分の姿で
嘴はもちろん黄色かった

そのまま部屋の中に入る
無音
嘴と眼をカッと見開く
部屋一面に敷き詰められた音叉
音叉音叉音叉音叉音叉音叉
音叉が屹立する森
今一斉に音叉が鳴り出す。

音叉一つは控えめで
チ〜ンと鳴っているだけなのだが
音叉の周波数がちりぢりで
振動がうねりに代わり
キーンという音とともに衝撃波に変わる
音楽にはならず暴力になる。

一つ一つは控えめでも
密閉した部屋の中で響き渡る不協和な音の塊、
共鳴する音 はぐれる音 微妙にリズムをずらす音
その中心に鎮座している意識は
あまりにもちぐはぐで

ぐぁらんぐぁらんぐぁらん
吸い込まれるような上昇と
引き裂かれるような落下の中に
曖昧に浮遊して
何一つ結論が出ず漂っている。

そのうち部屋は怪しげな赤と青と緑の原色の光に引き裂かれ
音叉は不規則に倒れ始め、
音叉の森は崩壊し、部屋も消滅した。
意識はそれでも曖昧に浮遊している。
音のある空間と音のない空間の間の
奇妙な歪んだ空間へ


自由詩 チューニング2 Copyright ……とある蛙 2012-02-21 11:34:39
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