2011年 即興ゴルコンダ投稿分
ブルーベリー

ぷらちな

(ぷらちな)
 ほしいな
 ひとすくいの
 チープさで
 ひとすくい
 きらきら。
 ゆるせないなら
 ぎちぎち。
 つめをたてて
 さよなら。
 しろいてくび
 きらきら。
 反射する
 水面、
 ゆびをさす
 ぷらちな。


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ダンジョン



(モンスターが大抵うろうろしてるんだ、)
(モンスター?何で?)
靴が散らばった玄関
ランドセルが置かれたまま発酵する
溜息すら澱むけれど
意を決してダンジョンへの引き戸を引けば
同時に発酵したランドセルは空気に分解され
エレメントさえ変更される

箱の前の中の。
箱の外のまるのなかの

声すら届かない闇の中の
このダンジョン

勇者もお姫様もああああもいない

「おかえり」

笑い声だけが響く。
意味なんて知らないし
ここのなまえもしらない
攻略の術はわかったふり

上げかけた手の指が力なく折れる
やめて!モンスターのライフは
なんてことにもならない夕暮れの赤だけが覗いているので
箱を開ける 宝物はないのも絶望の底で慣れたのに
箱を開ける
開け閉めする
鍵はいつも手の届くところにあるのに から
絶望の底が慣れた手つき で
開け閉めする

「ただいま」
くだらない嘲笑で装備を解き
アイテムボックスから回復アイテムを取り出す
唱えれば

玄関には色褪せた装備が散らば □。





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radiating pain





天気予報に耳を澄ませれば
いいような気がしたのだ

ふわふわの髪が
ごわごわになったから
明日の訪問者には
90年代卵パックをお見舞いしよう
贅沢は敵だから
貧乏に笑顔で挨拶しよう
もたいまさこみたいな笑顔を取りこぼし
眉根を寄せつつ
染み付いた たよ(り+る)
秋の燈の実るよう
それだけを ひきず(りに+る)
終わり.の湾曲の続くを交わした握手が
ぎりぎりと水面を焦がしつづけて



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冬に鰻を食べると言う事


土曜だから、と
無意味な言い訳をして
鰻の蒲焼を持ち上げ
がぶり、と齧り付いて
はふはふと皮を噛み締め
それからその分のたれの
浸み込んだ飯を食うという
なんだか面倒な食い方をした
手前にいるこの男は
鰻を一口大に切って
飯と一緒に味わう事の
できないことから
わかるとおり
箸使いが下手糞な男
糞 で思い出したが
(食事中に失礼!)
他にもトイレのドアを閉めないという
悪癖があり
どういう育ち方をしてきたんだと
眉を顰めるだろうが
そこは長男故の甘やかされた育ちだから―
そして
故 で思い出したが
この男、両親を早くに亡くし
祖母に甘やかされた育ちだから―
ということも付け加えておいてもらいたい
擁護するわけじゃないが
この男にも良い所はあるのだ
箸使いが下手糞な割には
言葉遣いは器用であり
といっても丁寧な訳でもなく
まあ冒頭のような
ささやかな洒落を
ビジネスシーンにて使えるというくらい
だが
意外とこういうのは大事なのだ、
男は自分で頷きながら
頬張った飯を咀嚼して
もう一口、と鰻に箸を伸ばした。
男の前にはテレビがあり
その隣には小さなクリスマスツリーがあり
さらにその隣には祖母の笑顔があり
遠く聞こえた咎める笑い声に
土曜だから、ともう一度呟いた。





自由詩 2011年 即興ゴルコンダ投稿分 Copyright ブルーベリー 2012-02-20 00:35:24
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