ぼくの足跡
寒雪

最初に見上げた時に見えた
生白い顔を曝け出した満月は
何度目の化粧を施したのか
もはやわからないくらい
ぼくの頭上を通り過ぎてた
その透き通った悲しい光の下を
ぼくは歩いている
最初に定めたはずの目的地は
ぼくの脳内ですっかり迷子に
探し出せないことを自覚しつつも
掴める物があることだけを
心に押し留めて
ただ懸命に歩き続けた


最初に認めた時に見えた
掠れて見辛くなった足跡は
激しい雷雨に襲われたり
舞い上がる砂塵に埋もれたり
繰り返し繰り返し
苦難に遭いながらもそれでも
消えることもなく
むしろ時を経ていくうちに
はっきりと鮮やかに
僕の網膜に飛び込んで離れない
足跡だと思っていたそれは
大量の「ぼく」という言葉が
数珠繋ぎに続く無数の
自己主張の残骸


振り返って仰ぎ見て
こんなにもぼくは
たくさんの自分を
積み上げて
踏みしめて
前に向かって歩んでいた
それを思うと
次に踏み出す足が
右足だろうと
左足だろうと
両足だろうと
ジャンプだろうと
もうなんでもいい気がしてる


これから先の歩みは
とても楽しいものになるに違いない


自由詩 ぼくの足跡 Copyright 寒雪 2012-02-18 14:28:22
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