透明な彼女
たちばなまこと

私は大丈夫をいくつ届けたのだろう

透明な彼女は
今にも白い光の中 消えゆきそうだったのだ
”四六時中”は彼女のそばにあるけれど
重い闇だったと泣いていた
透明な手足をうんと伸ばして 世界をも透明にしてごらんよ
思った程悪くはないから
こうして私もガラスの破片を
皮膚から浮かせて蒸発させてきたのだから

肌の向こうで流れる血液が
とくん とくん と私を呼んでいるようだった
私は彼女の水泡にとりこまれて呼吸を忘れ
眼球の奥の満ち潮と戦うのだ
精いっぱい笑うのだ
水の中には清純な魚がいっぱいで
むくんだ瞼を噛んでは 溶けてゆく

私には許すことしかできない
精いっぱい 許すことしかできない
私にも同じ青さがあった頃
崩れそうな体を固めていたのは
夢だったり
愛だったり
言葉だったり したのよ
伝えることしかできない
精いっぱい 伝えることしかできないよ

君の言う通りだ
休んでもいいのさ
大丈夫 許してくれるものはたくさんあるから
水を飲んでまた 歩いてごらん
透明な手足を伸ばして
案外世界は優しいってことを
思い出してごらんよ

ありがとうと言われる程 私はすてきでは無いけれど
透明な彼女が笑ったときの
雫を 手の平で 受けとめて 空にちりばめた
その一瞬だけは
少しだけすてきになれた気がしたよ


自由詩 透明な彼女 Copyright たちばなまこと 2004-11-30 22:05:15
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