双子
かいぶつ

鏡の前でポーズをとる双子の弟
の背中を手鏡ごしに見つめる双子の兄
その兄の姿を鏡に映す双子の妹
を鏡ごしに見つめる双子の姉
それらを外からカーブミラー越しに観察しながら
どの子とババ抜きをして遊ぼうかと
考えている視線の端に車の後部座席から
窓越しに僕を見つめる僕の双子の兄。

僕はいちばん左右対称で
いちばん偽りの目を持った双子の弟と遊ぼうと
部屋の中に入りトランプを均等に振り分ける。
手札が順々に引き抜かれペアとなり捨てられてゆく。
最後にジョーカーと目が合ったのは僕。

手札をすべて捨て切り、
捨てるものがなくなってしまった双子の弟は
兄とペアになって消えた。
鏡の中の双子の兄弟も消えた。
それで淋しくなって双子の姉と遊ぼうと思ったが
鏡越しに見つめるものがなくなった姉も
妹とペアになり消えてしまい
鏡の中の姉妹も消えた。

ひとり部屋に残され窓の方へと振り返る。
僕の双子の兄の顔がいっしゅん歪んだ気がしたが
歪んだのは外の空気で双子の兄を乗せた車は
ゆっくり発進し、どこかへ消えてしまった。

窓の外の歩行者、電波塔、雲。
その先に見えた景色のすべては
気持ち悪いくらいに僕と視線が重なるけれど、
どこをとっても左右非対称で
どこをとっても本当だった。


自由詩 双子 Copyright かいぶつ 2012-02-12 00:56:41
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