風の折れる音(「末路」改稿)
草野大悟
風をたべていた鳥は
夢をたべはじめるようになってから ずっと
お腹をすかせ
風は
その鳥をたべたせいで
空を吹けずに
地を這うようになった
たくさんの綻びた男たちと
肌をあわせてきた石竜子(とかげ)は
収納ケースの中から
ほつれた糸をもてあましている男を
選びだし
雑巾にして
零れたミルクを
一度だけ拭き
涼しい顔して
ゴミ箱に
捨てる
空いろの紅娘(てんとうむし)は もう
ひまわりを乗せることができず
ぽつん と
埃をかぶっている
それぞれの挽歌が
それぞれの殻をつけたまま
海の中を
ただよい
とおく
はるか とおく
空の彼方から
ポキン と
風の折れる音がする