愚痴
……とある蛙

 無性に活字の大きい本を読みたくなつた。老眼だから。出来れば薄つぺらい本がよい。根気が続かないから。一五〇頁位が手頃だ。しかも中身が空疎なものがよい。血の巡りが悪くなつて頭まで血が行かないからだ。重要なことばかり書かれてゐると眉間に皺がよつてくる。眉間に皺がよつてくるとそれでなくとも貧相な顔が益々陰気になつてくる。中身は書いてる奴の身の回りのことだけでよい。どうせ世間のことなんか興味もないからだ。もちろんそいつの身の回りのことも興味はない。そんなことを考へてゐたら読む本が詩集くらひになつてしまつた。しかも思ひつきり陳腐な奴がよい。。結構知的に見えるかも くつくつくつ。今さら女でもないのだが、ゐくらか持てたいという願望が少しある。全くの見栄でしかないが。議論などしたくもない。襤褸が出るし、人と話するのは苦手だ。一方的に話するのなら幾らでも話するが、退屈な理屈など聞きたくもない。そんな物どんなに声高に言つても屁の役にも立たづに自分の見栄でご託を並べてゐるだけだから。さういふ奴に限つて貧相な人生を送つてゐる。ブスな女房に出来の悪い子供たちに最後は邪険にされ口も聞かれなくなる。さうでなければ死んで、せいせいしたつてなもんだ。最近飼い猫が莫迦にしやがる。何にビクついたのか、突然猫のトイレから糞する途中に飛び出してきた。半分猫砂と最後の糞が一緒にトイレの外だ。堪らないのは俺だ。猫の糞の始末までせにやならん。しなきや女房の角が出る。まつたくもつてこのやうな生活は他人様には見せられない。


自由詩 愚痴 Copyright ……とある蛙 2012-02-07 12:49:21
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