冬錐抄
木立 悟





人の消えた朝を
獣の群れがすぎてゆく
光は暗く
息は昇る


割れた堤防
泡の色
見わたすかぎり
水は凍る


道は消え
冬は会い
街は震えず
鳴り止まぬ拍手


氷に岩に
打ち寄せる何か
音をひとつ連れ
消えてゆく


窓のかたちの空と曇から
音はゆうるりと離れゆく
光を負うものが
坂を下る


つの 針葉 薔薇線の背に
冬はとどこおり 泡は降る
誰もいないと
告げに来る蒼
川岸を少し持ち上げる


雨と碧
雨とむらさき
塗られるままに
遠去かる街


行方は淡い機械
繰り返す小さな差異
波のように逃れる
冬 光 群れ































自由詩 冬錐抄 Copyright 木立 悟 2012-02-06 20:28:08
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