アシナガバチ
くさいきれ

濡れたスリッパをベランダに干しておいたら
一匹のアシナガバチがとまっていた。
花の蜜を吸うように
命の水を飲み干すように
へばりついていた。
瞬時に、夏の大発生を思い出し、
    子どものころに刺されたことを思い出し、
殺そうとした。

でも、今は
何も危害を加えていない。
そうっとしておこう。
君はあのとき、わたしを困らせた君ではないのだから。

翌日、まだ、スリッパにくっついていた。
あそこに巣をつくる気なのだろうか。

その翌日、カラカラになったアシナガバチが一匹
ベランダに転がっていた。

最期をわたしに見せてくれてありがとうという気持ちが滲み出てきた。


自由詩 アシナガバチ Copyright くさいきれ 2012-02-03 15:41:15
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