自身を咬むプロキオン
木立 悟





花に目を閉じ
花に冥らず
おのれに見ひらき
立ちつくす


何かが緩やかに異なる日
顎の原からうなじの天へ
かみ合うもの無く廻る歯車
巨大なひとつの 宙の歯車


昼の半分に白く立ち
午後の行方を見つめるもの
音楽 音楽
花になれずに
秘密を暴く 茎の手のひら


唇と唾の輪のように
音と道は消えてゆく
ひとり残された機械の音
過ぎ去る片目の鼓動追う音


発電所でもあり
映画館でもある建物が
街を見下ろす丘に座り
空をいつも昼にしている


灰と黄緑を
行き来する花
光を透さぬ服の雨
青はそそがれ 流れ伝う
白に黒になり 流れ伝う


予兆の弓型
草さらう手
逆さまの自転図
原ともす星雲


震える逃げるこぼれる流れる
離れる遠のく振り向く奪う
感じる移る引きずる放る
飛ばす捨て去る果てる呑みこむ


骨と羽の指はからまり
水はゆうるりと水を赦す
まつりごとは去り
昼は分かれる


管のなかの音
あたたかい陰
二月へ 三月へ
あふれ出す


岩を切り 岩に積み
爆発する星を浴び
何もない背で
ひとつの花を護っている
森になる火を
護っている


次の光が丘をなぞる
影だけの影が坂を下る
舟の夢から覚める昼
ささやくようにまばたきはじめ
名を呼ぶように駆け出してゆく






















自由詩 自身を咬むプロキオン Copyright 木立 悟 2012-01-31 22:53:14
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