夕鶴
subaru★

あの日以来
飛ぶことが怖かった
離してくれないと
地上のせいに僕等はしていた

黄昏てばかりの僕等を
ずっと見つめていた夕陽が
かわりに沈んで

会うたびに膝を突き合わせて
会うたびに空から見つめ
そのお節介に僕等は気付く
少しずつ時間をかけて

土の上を照らす夕紅ゆうくれない
 優しく囁く
『羽ばたきなさい』と
クチバシをリップシンクしながら
僕等は教わる

まだある土の下の種に
あの僕等が教える
僕等が目を瞑らずに
決して震えないことを

近づく西の空から
この広げた羽根にも染みて
「今日は一段と映えてるだろ?」

土の中に埋めた臆病が
勇気に生え変わるまで
それを僕等は
上空から見届けている


※夕紅(ゆうくれない)・・・夕方、西の空が紅色になること。

※リップシンク・・・実際に声を出さずに口だけパクパクと動かすこと




自由詩 夕鶴 Copyright subaru★ 2012-01-28 17:05:28
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