るつぼ
乾 加津也

南島の
国際通りでるつぼに会おう
安里から
牧志にかけての人だかり

沖縄三越の道向かいから 平和通りはかまぼこ型で
龍の捩れる ガマほどにあやしく
おいで おいでよ
ほの暗くゆるやかに坂 奥に進めば ちらほらと
垂れ乳房の はんしーたいが
産業スパイのように 団扇をあおぎながら
あまたの民族史を吸い込んでいる
(ここは るつぼの生殖域らしい)

気を抜くな 伺っている
もう十分だ 肩から降ろすリュックをぐっさり
シャツをはだける にんせーよ
ここぞを知らない ねーさんよ
いまだ そやつだ
センダングサをかすめゆき
勝手口の立ち話(じゃま!)を転げぬけ
今日が駄目でも明日が
あるさあ
はあ?
エクスキューズミー
サンニンガーサに抱(いだ)かれる脱我
わけなく陽気なやからにむかって鼻息荒く
断ち/肌/刈る

オーバオバウ ヌースーヌー

 るつぼ
 舞う

 (なんで カチャーシー)

やたらめったら
螺鈿や花笠 夢見心地の不発弾
カジマヤーもキャラウェイものみこんで
波紋がぽっこり クロニクルげっぷ

それが珍味(じんせい)なんて言うなよ おやもう だから
ナァ ワカトーシガ

(医者)おやおや です
(患者)まったく です





*はんしーたい   おばあさん
*ガマ       洞窟
*にんせー     青年
*サンニンガーサ  月桃の葉
*カチャーシー   踊りの類
*キャラウェイ   ポール・W・キャラウェイ
*カジマヤー    風車 九十七歳を表す
*ワカトーシガ   わかってるよ


自由詩 るつぼ Copyright 乾 加津也 2012-01-04 17:12:52
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