お詫びがわりだ、ぶったたけ、ぶったたけ
竜門勇気


半分どこかへ
わすれながら
歩いてきたけど
最初だけ意味がなくて
終わりぐらいには
価値ある何かに変わるなんて
錬金術なんて信じない

久しぶりに
はなしに来たよ
暇だったから
君以外とあそんでた
努力はしたけど
ぜんぜん体重が減らなかったから
君以外とはあそばなかった時と
同じ服を着てこれたんだ

こうやって話してるみたいに
だれかと
こうやって手をつないでるみたいに
だれかと
消せるのは未来だけなんだ
変わってしまうのは未来だけなんだ
不幸はいつも昔にある
悪い夢だけ見続けてたって
意味はないけど
意味なんてないなんてないなんて
こうやって話してるみたいに
だれかと
こうやって笑ってるのだって
だれかと

深爪を僕は尊んだので
薬指をなくしてしまった
雑菌は増え続けた
真っ黒い線が何本か心臓の中に混じって
雑菌は増え続けた
甘い耳鳴りで汚れた唾液を注いでる

街を歩く奴らが敵に見えても
悲しいだけ
窓を開けても寂しくなるんだ
涙が内側から来るから
誰と話してもうつむいてるんだ
誰も通れない 何も通さないさ
閉塞のリボンをほどいて
まだ僕は夜の中
前に進め 前に進め
痛みも別れも喪失も
そんなんなんだ
進め 進め
そこに彼女がいるんだ
誰かがいるんだ
日増しに嘘がうまくなっていく
僕は
僕の嘘を信じそうになってるのさ

甘い匂いもあったかい指も
まぼろし まぼろしにするのは
時間 いまを過去に変える魔術師
こうやって泣いてるみたいに
だれかを
こうやって沈むようにして
だれかと
もう関わりあえる自信はないし
どのみちそんなことはできない

こうやって話してるように
だれかと
こうやって手をつないでるように
だれかと
結局僕だってそうして生きていくべきなのかもしれないんだ
でもこうやって
うつむいて
生きていこうと思う
もう
世界が目に映るのすら痛い


自由詩 お詫びがわりだ、ぶったたけ、ぶったたけ Copyright 竜門勇気 2011-12-28 04:25:12
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