かなしみは知らない
佐々宝砂

涙するのなら涙をなめてあげましょうか
頭にきてるのなら話をききましょうか
それじゃ足りないと言うのなら
錠剤をひとつぶいかが?

私は知っているのよ
あなたが夜中にこっそり泣いているのをね
そしてそれをこっそり詩にしたりしてるのをね
別に恥ずかしがることはないのよ

私はだってみんな知っているのだもの
押入のなかのあれも抽出のなかのあれも
奥深く隠してあるあなたの涙は私のもの
誰にも言えないあなたの恐怖は私のもの

でもあなたのかなしみは知らない
そんなものはどうでもいいのよ


自由詩 かなしみは知らない Copyright 佐々宝砂 2004-11-26 19:40:13
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