三日月に梯子をかけて
まーつん

三日月に 梯子をかけて
一緒に 昇っていきましょう

僕の秘蔵のワインボトル マントの裏に忍ばせて
風にあおられるトンガリ帽子を 飛ばされぬようおさえながら

夜遊び仲間の君の肩 しゃべるカラスがお供する
今夜は空の 屋根裏部屋から 二人で世界を眺めましょう

           *

おいせ おいせと おや 意外と早く着いたな
やあ失礼しますよ お月様

どっこらせと さすがに息が上がるね
三日月の顎ってのは 意外と狭いな
君 もう少し奥のほうに ずれてくれるかい
そうそう 鼻のあたりに よりかかってさ
月明かりって 冷たいんだな
ドライアイスみたいに ひりひりするよ
いい機会だ お月様の顔に触ってみろよ
すべすべしてら お月様 くすぐったいのか 震えてら 

           *

見渡してみなよ 静かなもんだろ
地球の裏側が まぶたを閉じて
スースー寝息を立ててるよ
じゃあ表はどっちかって?
゛表゛はいつだって 日の当たる場所さ 
それは僕らのいるとこから 今はだいぶ遠ざかってる
あの 明暗境界線の向こうさ

ほら 背伸びしてみなよ
見えるかな 水平線の向こうで 
太陽が忙しく 地球を温めてる気配が
ぼんやりとほのかに うずくまるほむらとなって
星の海でできた壁紙を 少し照らしているだろう
あの ずっとずっとむこうに 夜明けがあるんだ
そこでは 一日の始まりが 黄金色に 燃えさかっているはず

その 光の満ち潮は
水平線の向こう側を ぐるりと覆いつくし
やがて 僕らの足元まで 押し寄せてくるだろう

まあ 今はひとつ 乾杯といこう
カチリとさ 涼しく グラスを打ち鳴らして
気持ちがいいな 足元に 深く広がる 夜のしじまのカーペット 

東から西へ 太陽目指して流れる雲は シロナガスクジラの群れみたい


自由詩 三日月に梯子をかけて Copyright まーつん 2011-12-22 00:47:14
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