大きなケヤキのある公園へ
霜天

人の少ない下り電車で
少しずつあの日へ帰っていく
遠いことへ、遠いものへ
車窓の景色は少しずつ背丈が小さくなって
昼の下る頃に
誰もいない
四角い空間は
ただ、がたがたと響いた
それだけを聞いていた


記憶の公園で
大ケヤキが
その手を伸ばして
広がる空を邪魔した、のは
きっと
遠い遠い遥かなこと

レールのがたりと揺れの一つで
戻れる僕の内側の時間は
何センチメートル
ケヤキの背丈を縮めるだろう
わずかなこと
遠い時計と繋がる


ブレーキの音が弾けた
駅前では
馴染みの野良猫の出迎えに
見知らぬ顔が一つ混じっていた
西日に倣って
大きく伸びをする
シルエットのケヤキの向こうで
一日の終りが
確かに


自由詩 大きなケヤキのある公園へ Copyright 霜天 2004-11-26 02:25:02
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