蟷螂の夢
ただのみきや

一本の草となり風にゆれている
無数のいのちの気配
静かで心地よいざわめき

一本の草となり風にゆれていた
触覚をおもいっきりのばしてみる
しびれるような蜜蜂の羽音

暑く深く
生と死は
しっぽをくわえた蛇のよう

一本の草となり風にゆれていた
翅にめだまのある蝶を抱きしめて喰らう
両腕の鱗粉を心地よく口で拭う

いつの頃からか見えない壁に囲まれて
月のような昼ばかり
うつらうつらと夢をも見るが
記憶の色もすっかり褪せて

一本の草になり
吹かぬ風に
ゆれてみる




自由詩 蟷螂の夢 Copyright ただのみきや 2011-12-13 23:03:35
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