白い女の頬を撫でる影
マーブル

頬を撫でる男の手は熱い影でできていて
影ってゆく白い女の左頬を震えた手で包んだ
歓びのあまり震えが止まらなくなると
月の女は夜空に幾千の氷菓子を抱きかかえ
男を待ち焦がれているというのに


宇宙は風穴を開け静寂のうねりのなかで
ハミングするばかりなんだ

 わたしのピアスホールは紅く滲んでしまった 
左肩が掠めてゆくそして去っていってしまうのは何故なのと
問いつめることは白い女にはできなかった


 白い女の首にはムーンストーンのペンダントがぶらついていた
野良猫の足音のように軽やかに音もなく
         

 男の指には漆黒のオニキスが光りを迸っている
嵐の夜が明けて昇る太陽を見つめすぎてできるあの残像のような


頬をすべて包んだ後には
葡萄酒を飲み干した男の胃袋のなかだったと月は思う
12月は世界の錆びついた景色に終わりを告げる月なんだと思う
わたしの滑稽な硝子玉とあなたの贅沢な骨は同じなんだと思う
蝕まれることなんてないのよいつも影は包んでくれるのだと知る


頬を撫でるその手は
わたしをじりじりと焦がすけれど
掠めた左肩が去ってゆく頃
わたしは青い庭に戻ってゆく
胸に棘が抜けないまま
ふたたび凍えた頬になり
かじかんだ男の手をそっと想う


今度はわたしのほうね
あなたを包む日は何時になるのだろう
春の微睡みのなかかしら
草花の香りがする場所で
うたたねを夢にみている

  
   ラベンダーの瞳 マーガレットの遊びとクローバーの祈り











自由詩 白い女の頬を撫でる影 Copyright マーブル 2011-12-11 13:58:23
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