満員電車でGO
Tシャツ

 久しぶりに満員電車に乗った。小学校・中学校・高校・大学ともう数えるのも面倒なくらいの年数を満員電車に乗った。僕は朝の駅のホームに立ってどこに立っていればよかったっけってウロウロする。でもウロウロする時間なんて無い。電車はあっという間にやってきて、ひとさらいみたいにあっという間に僕を乗っけてゆく。そう、両手は目の届くところにおいておこう。最近は冤罪なんてものがはやっているらしいから。何年も満員電車に乗った僕は、もう心得ている。目的地に着くまでの過ごし方を。でも、久しぶりに満員電車に乗ったから、周りが気になる。目の前のお姉ちゃん…きっと大学生だ。ぼんやり外を眺めて流れる景色を見てるんだか、見てないんだか。さっぱりだ。何を見ているんですかってちょっと質問してみたい。いや、本当に大学生なのかも聞いてみたいというか、ちょっとご飯でもどうかななんて思う。こんなに僕はナンパだったかな。そんな心の悶絶をしらずにお姉ちゃんは窓の外を見ている。いやもしかすると、窓に映った自分を見ているのかもしれない。僕の左隣のOLさんはバリバリだ。黒のスーツがビッて決まって。エリが針のように突き出しているように感じる。髪は流れるようにさらさら。唇はビルビルに輝いて。僕の大好きな、なめかけのチュッパチャップスを思い出す。あれもビルビルだ。まつ毛は、爆弾が爆発した瞬間みたいにビンビンにとんがっている。今日も仕事だ。僕の右隣のおっちゃんは新聞を小さく折りたたんでこっそり読んでいる。ちょっと新聞を盗み見ると、どこぞの小学生が誘拐・殺人…アルカイダが…自爆で10人…う〜ん世界では毎日色々な事が起きているんだ。おっちゃんは新聞を読んで何年かな。いったい何人の死を読んだのだろうか。僕自身はゆうに100人は超えてるはずだなって思う。どうせなら、この路線では何月何日電車に人が跳ねられお亡くなりました。ってリアルタイムで新聞に載せてもいいのになって一瞬思うけど。なんでかな。交番にも、怪我人・死亡ってでてるしなぁ。朝からこんなにいっぱい考えると、もう眠くなってくる。そろそろ全ての煩悩を捨て去り、目的地まで修行をするぞ。そう。満員電車は修行の場。衆人環境を無とし、更には自らの心の中を無と化す。

………昼飯はマックグラウンだな………


散文(批評随筆小説等) 満員電車でGO Copyright Tシャツ 2004-11-25 22:18:41
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