冬の観覧車
塔野夏子
丘の上 灰色のあかるさの中に
観覧車は立っている
色を失くしたその骨格を
冷たい空気にくっきりと透かして
ただしずかに廻っている
ゴンドラのひとつひとつに
乗っているのは
かつてそこで生まれた記憶と
釣り合うだけの虚無だ
――ここはいつから冬なのか
もはや誰も問いかけることはない
聞こえない歌のように
観覧車は廻りつづける
やがて この景色いちめんに
雪ではないものが降りしきる
自由詩
冬の観覧車
Copyright
塔野夏子
2011-12-09 20:17:21