喫茶店
鈴木みか

あったかいコーヒーが飲みたい。
あたたかいコーヒーは偉大なのです。ほかほかでいい匂いがして、マグカップをもっているだけでふにゃあとなってしまいます。
飲んだらほうっと言葉にならないためいきがでて、もうなんというかしあわせとしか言いようのない感じ。
空を見ても、草木をみても、川をみても人をみても、ああ、世界は美しくて愛しくてしあわせだーというような、そういう心のありかたにあこがれます。ゴージャス、とかはではでーとかそういう華やかでスポットライトがあたるようなものじゃないけれど、すぐそばでこっそりと佇んでいる些細なものに、穏やかなまなざしを向けていたいといつも思うのです。

私は喫茶店になりたいです。
店の中ではニックドレイクやビルエヴァンスが静かにながれていて、ぬくぬくのコーヒーや紅茶がでてきて、時間はゆっくりやさしくて、お店ににいなくてもちゃんとお店があって、そこでまったりできることをしっかり信じていられるような、そういうお店になりたいです。
お店にちょっと寄ってくれた人には、自分ができうる限り最高の、おいしいコーヒーを出したいし(お口にあうといいのだけれど)、遠巻きに見ている人にもほほえみかけているような、すてきなお店になれたらなーと思います。がんばります。

おしまい。

と思ったけれど、あまりにも短いのでだらだらと書き連ねていこうと思います。
今はしらない町の、しらない喫茶店にきています。住宅街にあって、おうちを改造したような、新しい、シンプルな、でもどことなくあたたかいお店。入り口にはちいさなクリスマスツリーが飾ってあって、カウンターと、テーブルが6組。ジョッシュグローヴァンみたいな音楽がささやかにかかっていて、あとはキッチンの音と車の音が遠くに聞こえます。モーニングセットは、ネルドリップのコーヒーとホットサンド、ちいさなサラダに、りんごが3かけ。
郵便屋さんのバイクが外を通っています。白い車と青い車がすれ違いました。はじめてきた、しらないまち。そこにはちゃんと生活があって、一日があって、朝があって、よるがあって、私が会ったこともない、もしかしたら一生であうことのないかもしれない人々がたくさん住んでいて。なんだか愛おしい、あたたかな気持ちでいます。私はわたしが生きている間に誰と、どれだけのものと、出会えるのでしょうか。そのなかでずっと大切に思えるだろうとしんじることのできる、やわらかできらきらとした人やものを、いくつ見つけることができるのでしょうか。

朝にはざあざあ降りだったのに、いまはすっかり晴れています。コーヒーについてきた金平糖みたいなちいさい砂糖はほわほわ甘くて、しゃりしゃりとしていて、困ってしまうくらい幸せです。目の前に好きな人がいたら、もっと幸せだろうとも思います。
すっかりぬるくなったコーヒーを飲み干します。ちょっと苦くて飲みにくいけれど、ちゃんとおいしいコーヒーですごいなーと思います。うーん、いいこいいこ。
さて、ポメラを閉じて、出かけようかな。
外にでて、好きな人に会いに行こうと思います。


散文(批評随筆小説等) 喫茶店 Copyright 鈴木みか 2011-12-09 18:22:20
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