上書き
寒雪



路上に倒れこんだ冬の夜
体の芯から冷やそうと吹きつける
荒々しい木枯らしにつられたのか
降りしきっていた雨は
いつの間にか雪に変わる
地上に降り立ち始めた
情け容赦のない雪は
若者が吐き出した
チューイングガムの黒さ
削られても粗いまま
ざらついたアスファルトの黒さ
見たくもない月夜の
死角に眠る暗闇の黒さを
白く柔らかく塗装していく


薄目を開けて見えた
ぼくの過去を写し取った
路地に漂う悲しみの狂おしさに
隠しておけなくなった心の襞を
何度も何度も嘔吐して
白くなった地面を紅く染める


止むことなく降り積もる雪が
吐き出したぼくの紅さを
白く上書きしてしていく
もうすぐ閉じてしまうだろう
力を失った瞳をこらして
その光景を見ようと頑張ってみる


自由詩 上書き Copyright 寒雪 2011-12-06 04:37:23
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