蟻の列
もずず


みぞおち辺りに
蟻がいる
ぞろぞろと列を作り
どこへ向かうでもなく
同じところを
ぐるぐる
ぐるぐる

雲で出来た綿飴を与えたら
列を乱し慌てるだろうか

悲しい哉

教育として教わった道徳が
なんだか通用しないことがあることを

テレビは
毎回真実を伝えているわけではないことを

すべての良心が
利他ではないことを

人が笑うのは
楽しいときだけではないことを

知ってしまった

でも

詰らぬ感情など
何一つないことも

日傘が守るのは
皮膚だけではないことも

車が乗せて走るのは
体だけではないことも

愛は
確かに存在するのだということも

いつの間にか

知っていた

蟻は相も変わらず
ぐるぐる
ぐるぐる

おや
一匹が列を外れたようだ

少しだけ胸の辺りが
楽になったような気がした



自由詩 蟻の列 Copyright もずず 2011-12-04 21:59:48
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