王の突起物
シリ・カゲル

アラジンの石油ストーブを
幾度目かのオーバーホールに出しながら考える
うちらがセックスをしなくなった理由。
笑顔を依頼された
王が
各地を巡って
拮抗する賛成派と反対派の
籤によって定まる未来。
健常者たちのささくれ立った
幸福度、と等価交換で入手した
サイリュームを振り乱し、サビの部分で合唱する
障害者たちが躍動する。
スボルメのパーカーのポケット
セックスをしなくなっても
そこにはまだ。
タジン鍋の売れ残りで王の一行をもてなす
地産地消の旗印の下で
作られる大量のクスクスは
手間がかかっている割には
突起物が足りない。
何度目かのサビのところで
任官間もない片腕のベルベル人が
盗んだバイクで走り出す
眠れない夜を抱いて。
野ざらしになったパーカーの背中部分で
“ハワイとオスロはどちらが良い画数か„
表面にアイロン転写された国籍不明の英語が湿る。
ふつつかな娘ではございますが、正体は突起物。
ヘリンボーン柄の突起物。
報復人事で突起物。
マグレブの姫を娶ることになって、王は
見えそうで見えない部分に税を課し
無視してこれを逃れようとする反対派には
目には目を式の同害報復刑をもって
盲目の姫に無上の愛を捧げるのだ。
やらしいバイクで走り出す
優柔不断の夜に
夜を抱いて。ねえ、抱いて。
ラングドシャを焼き上げる薫り
理論値から導き出された外れ籤
ルームメイトの置いていった石油ストーブ
劣等感が部屋を満たしていく
老朽化著しい、ふたりの部屋に。
わたし、と、あなた
をつなぐ突起物。
ん…色っぽい。


自由詩 王の突起物 Copyright シリ・カゲル 2011-11-30 23:04:39
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