秋の罪
攝津正

二千十一年十一月

四日金曜日

おやすみを 君に言うのは 寂しくて いついつまでも 話していたい

毎晩も 君の声だけ 聴きたくて 電話しようと 思うがやめる

何故君が 俺を愛すか 分からずに 鏡を見ては 首を傾げる

「俺」なんて 言ってる自分が 嘘っぽく 一人称を 使うに迷う

gayだから 一人称が 分からずに 「自分」なんかで 済ましてしまう

六日日曜日

僕はただ君のことだけ想うから君も僕のことだけ見てて

逞しい君の体を想うたび僕はほっぺた赤らめている

君の腕筋肉ついて堅いから触れたときには安心できる

僕はただ君の心が欲しいから君の眼差し常に気にする

君はただ三十五歳の男の子僕はネコです恥ずかしいけど

タチネコを論じることも意味なくて愛があるならそれでいいのさ

八日火曜日

おはようとmail送るは彼氏のみTatum聴いて麦茶を啜る

独学でjazz pianoに邁進しけれど成果はさしてないかも

雨上がり爽やかな秋に歌を詠むわれは確かに幸せ者かな

Facebookのサイトを開いて以下二首を詠む。
食事終えFacebookを開いて見「いいね!」がないか確認してみる

友達がFacebookで1000人に近付いているのもどこか楽しい

Twitterで鯨さんが出てきてFacebookに移動してきて以下の二首を詠む。
Twitter, over capacityで繋がらずFacebookに書き込んでみる

Twitter公式webが重いので他所から文章コピペしている

九日水曜日

抑鬱に沈んでいてもやむを得ず築地大ちゃんに買い物に行く

元気なく死んだほうがいいと思ってもなかなか死ねぬこの世のさだめ

友達は「元」友達は社会人キツかろうと必死に働く

ひきこもり働かぬわれはくだらなく無意味に過ぎて屑と言うべき

十一日金曜日

生きるのはむずかしいねと思ってもでも生きている秋の日の夜

生きているわれを疎ましく思っても「われ」そのものを消しはできぬか

恋しても依然性欲衰えず男女いずれもつい見てしまう

彼氏には悪い悪いと思いつつつい妄想を膨らませてしまう

風邪引きの彼氏逢瀬に来られずにわれただ独りピアノ弾いてた

彼氏さんなんで私が好きなのか?自問してみて遂に分からず

自分にはなんの魅力もない癖に愛されているのを気取ってみせる

魅力ない中年おかまの自分でも愛してくれる彼氏は素敵

なぜわれが愛されるのかわからずに鏡に向かいやはり首振る

会えなくて寂しいけれどそれはただわがままなのでじっと耐えてる

Twitterで呟いてみても寂しさは変わらぬ故に彼氏を想う

ホモホモと言うほどまでにはホモでなくそれでもホモなわが日常よ

ひきこもる自分もやはりホモだから通ってくれる彼氏に感謝

十二日土曜日

生きるのがウザいと思う自分さえ生きていけるこの世は奇蹟

絶望の猫とは自分のことだけど望みなくても今日も生きてる

詐欺師から詐欺メールが届いても開くことなく速攻捨てる

ゲイウェブで詐欺をしている卑劣漢人の弱みに付け込みやがって!

詐欺に遭いそれを拒むもなお寂し彼氏がいても欺かれるとは

寒い夜もう冬のようだけど明日は暑くなるとは何よ?

勃起した彼氏にメール送ってる「ちんこ絶対嘘つかない!」と

抑鬱の呟きばかり繰り返すリムーブされても仕方あるまい

十三日日曜日

恋に酔う僕は場末の猫だけど彼に擦り寄りニャーニャーと鳴く

わがうたにうしろだてなどありはせずこころのままによんでいるだけ

辛い世と思う自分も甘ちゃんで苦労知らずに育った報い

十四日月曜日

萎えまらのわが性愛は貧しくて不能の意識厭でも高まる

恋しても自分はやはり困難系袋小路に閉じ込められた猫

万が一愛を失う不安から自分の写真を切り裂いている

猫なれど名前はもうありさだめあり望み少なく余生も僅か

孤独とはわがさだめにて避け難く抱き締めたまま冥土まで行く

恋心あれど我が名は絶望の教室と言う誰が呼んだか

わが恋が終わるとしたらわが生も終われとばかり佇んでいる

「生きられぬ」わが人生は暗いもの挫折ばかりで成功はなし

わがこころ親も知らぬと思うけど誰も知らずに済めばいいのだ

これほどの苦しみに堪えてきたわが半生を棄てようと思う

仏にはなれぬ修羅のわれゆえに冥府魔道をただ独り行こう

苦しさを語ることにて和らげるUstreamも今は厭わし

生存を否定してきたわれならば最後を自死で飾るのもよし

魔性ゆえ生きることすら許されぬそんな姿に僕はなったよ

花と散る機会ないからだらだらと生きているのも惰民の証し

食い扶持を稼ぐように言われても何もできずに俯いている

十五日火曜日

邦人のpianoを聴いてjazzってものの輝きを知る

pianoの音(ね)響く部屋にてPCに向かって明日の受診を想う

わが病い贅沢病と言われても治すすべなし医師もわれらも

抑鬱の続く時間に射し込むはjazz pianoという音楽の光

十八日金曜日

僕を指し「汚い」と言う君らこそ己(おの)が姿の醜さを知れ

僕はただ彼の言葉を信じてる彼がいなけりゃ生きていけない

彼のこと想えば胸が熱くなる通い婚に似た僕らの恋路

三十路にておかまの道に目覚めつつ彼の体を受け入れている

ドヤ顔で馬鹿な「倫理」が出しゃばって人の絆を壊し続ける

二十一日月曜日

精神を病んで夢ばかり見ている僕はただのおマヌケ

早朝に目覚めてジャズばかり聴いてる僕は早老なのか?

戯れに与謝野晶子を読んでみる奔放にして雅やかかも

恋人のmailを待って焦ってる君の気持ちが変わらないかと

恋愛に現(うつつ)を抜かす僕だから夢から醒めず酔って死ぬかも

二十四日木曜日

あの人もまたかの人も友でなし連絡しても返信はなし

歳月が人と人とを引き離し切れた絆は二度と戻らず

旧友を失うことは辛くてもこの現実を受け入れるべし

初めから独りと思えば怖くない孤独を求め孤独恐れず

死を思う気分ばかりが瀰漫する怠惰な日々もいつか終わるか

無為故に無価値の故に死を思うその心が理解されぬか

労働を放棄したから社会から切り離されて余生を過ごす

友達はいないと思う秋の夜にネット彷徨い過去を求める

芽が出ぬと罵られても平然と生きているのも惰民の証し

達成を諦めている僕だからただだらだらと駄文を流す

女にはなれぬものよと諦めて女々しい男そうして生きる

暇だからWardell Grayを聴いてみる夭折したのがなかなか口惜し

Be-BopのWardell Grayという人はsaxを吹き若くして散る

二十七日日曜日

今日もまた私はなんてひどい人平常通り異常に動く

人格が壊れていても平気かも壊れた自我にわれは気付かぬ

困るのも困らされるのも困ったちゃん困ったままで猛ダッシュする

君死ぬな自分は死んでも良いけれど生命保険を遺してみたい

「なんじゃこりゃ」驚く君に僕は言う「普通だからさ、気にしないでね」

私はね、面白くない歌を詠み、莫迦にされても、平気なんだよ。

二十九日火曜日

わが恋の行方も知らずパソコンに向かって文を綴っているよ

生きるのが面倒臭いと思う日も飯喰うからか生き延びている

気怠さに堪えかね床に就いてさえ悩みが多くとても寝られぬ

血圧の高さに驚く日々だけどもし逝けるならそれもまたよし

沈鬱な痛みに体を覆われて毛布にくるまり丸まっている

父親が「坊っちゃんだね」と言った僕何もできずに寝転んでいる

イランにて同性愛の罪で三人の男性が処刑されたとのニュースに触れて以下を詠む。
中東で同性愛ゆえ殺された男三人天国へ逝け


短歌 秋の罪 Copyright 攝津正 2011-11-29 11:47:05
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