カモメの宝さがしの唄
TAT

























愚かでみじめなトロージャンは
















最後にたったひとつだけ手元に残っていたダイアモンドを
















海に投げてから死ぬことに決めました














川や沼やゴミ箱ではなく海に













きりたった崖の上から大粒のダイアモンドをひとつ









あざやかに棄てたら








どんな気持ちがするだろうか













そう考えるとトロージャンは六千年ぶりにわくわくしました











『川や沼やゴミ箱では駄目だものな…』















血も肉もぜんぶ削げて









骨と思いだけになったトロージャンは










エネオスのセルフでガソリンを入れてからバイパスにのる事にしました












































今日羽織るコートはそのまま死に装束になるのだから












地獄でカッコがつくように






一番良いポール・スミスを選びました












































『カモメの宝さがしの唄』を口笛で吹きながら








トロージャンは









マンションのドアにいとおしそうに鍵をかけました






















天国までは何海里


七個目の月



いるかの目








凪から四歩




時化まで三歩











王様のもの



姫のもの





海賊のもの





君のもの
















けしてカモメに見つかるな





浮いてカモメに見られるな

































































あわれで貧しいトロージャンは










































死んでから休憩をとる事にして
























とりあえず今は何が起きても止まらない事にしました










































自由詩 カモメの宝さがしの唄 Copyright TAT 2011-11-24 22:20:17
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