前夜
長押 新


トンネルを走る車が
滲んでは跳ねかえりながら
そこに胎動を生み出しては
ただ次々に表れる安堵
耳はそれだけを聞いていたい
反響したエンジンの音が
体の端にしがみついている

臍から生えた懈怠が
わたしに糸を張る
生理が圧し広げるよう
動いて流れるのがわかる
暗い体内で探し物をするには
鈍い痛みが続いてしまう
うごうごした血がいる

生理が中からわたしを食べて
勝手に見出していく
掻き分けられたわたしの音がする
その空洞に反響する
うごめいているのは私の血

伸びた糸が絡まる
圧し流される痛みに
指を入れてやる
糸はそのせいで複雑に
一本が複数に変わっていく

湿っている首筋や腹部
生理が糸を照らしている
橙色のライトが夕暮れの月より
ずっと近くにある
もう痛みを知りたくないから
朝になったら
それから再生を始める



自由詩 前夜 Copyright 長押 新 2011-11-20 13:33:51
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