消しゴムの詩
森未

小さくなっていくこと
悲しいと思ったことはなくて
けれどいつか
君の小さな手で
拾ってもらえなくなるのだと思うと
それはとても悲しいことみたい

君はとても
ていねいな人で
きっちりペンの向きをそろえてしまって
キャップもきちんとしているから
それがささることもありません
僕もきちんとカバーをつけてもらっているし
ほんと、なんの問題もないんだよ

僕は君の間違いを
小さな消しカスにするのが役目で
消さなくてもいいのになあ
と思うようなすてきなことばや落書きだってあるんだよ
それでもすぐに消しちゃう君に、もう少し自信があったらな

君との時間があと少しでも
何にもしてあげられないんだけど
こうしてここにいられて僕はよかったと思っている
思いの伝えられる君たちみたいならなあ
それがひとつ心残りです


もうそんな無理に消そうとしなくていいんだよ
ていねいな君は
僕をそっとゴミ箱へ入れる
次は君たちみたいだったらなあ
転がって、わめいて、乱暴に扱われた時は怒れるのになあ

そんなわけにもいかないのです
せめて最後
君の手で
ゴミ箱へ
ありがとう、さようなら




自由詩 消しゴムの詩 Copyright 森未 2011-11-18 21:05:18
notebook Home