廃屋のトラクター
灰泥軽茶

以前は畑であった場所に

蔦に絡まり錆びだらけの

小さなトラクターにエンジンがかかった

ガタゴト ガシャグシャ
ガタゴト ガシャグシャ
 
寂寥感に覆われた廃屋を進んでいくと
椅子やテーブルがひっくり返り
箪笥だけが静かに佇んでいる

ガタゴト ガシャグシャ
ガタゴト ガシャグシャ

コンセントを抜かれた電気製品は
まるで死体のように何か物言いたげだ

錆びだらけの小さなトラクターは

煩わしさに疲れて
寂しさを好んだ
許すことに慣れてしまい
寂しさを好んだ
慣れ合いの愛想笑いに辟易して
寂しさを好んだ

と最後に独り言をつぶやき

プスンと止まった

取り残された廃屋の庭には

あざみが棘を怒らせながら美しく咲いている


自由詩 廃屋のトラクター Copyright 灰泥軽茶 2011-11-13 00:01:47
notebook Home