風の生まれる
古代 透


太陽が帆をあげて
シャツの内側の漁港を照らした

さえぎる言葉のない純粋な心臓を
切り裂くように 糸を縫うように 流れる光
家々の屋根が風に吹き飛ばされ
海辺のように 透き通る空に 舞う破片

手のひらをかざせば 崖の向こうから
燃える風が吹いてくる

陽にさらされたすべてに恋をしていた

崩れ落ちるいのちの氷河 
未来は氷に閉ざされている
その胸のなかに 幾億年さえ
光に溶けて散らばっていく

風の生まれるすべてにさようなら
きみの手のようにやわらかな力よ


自由詩 風の生まれる Copyright 古代 透 2011-11-12 23:12:36
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